La violenza: quinto potere
イタリア語原題日本語訳 暴力 第五の権力
監督 フロレスターノ・ヴァンチーニ Florestano Vancini
脚本 マッシモ・ファリサッティ Massimo Felisatti e gli altri
音楽 エンニオ・モリコーネ Ennio Morricone
公開年 1972年
出演者 エンリコ・マリア・サレルノ Enrico Maria Salerno(検察官)
ガストーネ・モスキン Gastone Moschin(コロンネージ弁護士)
リッカルド・クッチョッラ Riccardo Cucciolla(サレーミ教授)
マリオ・アドルフ Mario Adorf(アメデオ・バルレーゼ)
チッチョ・イングラッシア Ciccio Ingrassia(ジャカローネ)
アルド・ジュッフレ Aldo Giuffre'(ジュゼッペ・サレーミ市長)
マリアンジェラ・メラート Mariangela Melato(ロザーリア・リカータ)
グイード・レオンティーニ Guido Leontini(ヴァチルカ)
ジョージ・ウィルソン Georges Wilson(クルーピ)ecc.
シチリア。
ヴァチルカはあるグループの一員から殺人をしつこく依頼され、やむなく引き受けます。
法廷。
被告席のヴァチルカの口頭弁論。
ヴァチルカは殺人依頼の時点から話し始め、その殺人が誰の利益になるのか
察していたと述べます。
(ヴァチルカの回想)
依頼どおり、ヴァチルカは農場に現れた男を射殺します。
ヴァチルカはその後も、同グループの他の男から依頼があり、引き受けたと語ります。
建設業者アメデオ・バルレーゼの弁護士コロンネージは、
ヴァチルカを責め立てるような口調で質問を浴びせます。
検察官は一連の殺人事件を、当該地で計画されているダム建設をめぐる2グループの抗争であり、
ヴァチルカへの依頼主から組織上部に至る責任を追及しようと考えています。
一連の殺人事件で運転手役を務めたジャカローネは、大家族を養うために依頼を引き受けました。
ヴァチルカとジャカローネが依頼主として名前を挙げたのは、バルレーゼ派のメンバーでした。
バルレーゼも被告席で陳述を行います。
バルレーゼは建設業者。くだんのダム建設プロジェクトを落札する腹づもりでいます。
(バルレーゼの回想)
バルレーゼは、夜の街で襲撃に遭う事件に見舞われたことを話します。
ダム建設賛成のバルレーゼを狙ったのは?
次に証言台に立ったのはサレーミ教授でした。
(サレーミ教授の回想)
サレーミ教授の弟で市長だったジュゼッペ・サレーミ。
そのサレーミ市長の事務所に…
クルーピが上院議員と連れだって訪ねてきます。
クルーピはこの地の裕福な地主でエンジニア。
ダム建設により農地を失う恐れがあるため、ダム建設反対の立場。
クルーピは、サレーミ市長の党に自分の仲間を入党させたいと申し出ますが、拒否されます。
サレーミ市長は貧しい人々を豊かにするダム建設が承認されたことを歓迎していました。
2
サレーミ市長が護衛を伴って帰宅途中、不審人物に尾行され、殺害されます。
その様子を目撃した子どもも、口封じのため撃ち殺されます。
サレーミ市長殺害のために刺客を送った容疑で被告席に着いたクルーピ。
しかし、クルーピは知らぬ存ぜぬ、関係ないと、しらを切ります。
巻き添えになった子どもの母親も証言に立ちますが、何かを恐れて沈黙したまま。
続いて証言に立ったのはロザーリア・リカータ。
(ロザーリア・リカータの回想)
リカータの店近くで待ち伏せしていた車内から、通りかかった車が襲われます。
車外に逃げた車の主を押し倒し、口に拳銃をねじ込んで発砲したのは…
アメデオ・バルレーゼでした。
その一部始終を目撃してしまったリカータの夫は店舗内に隠れ、
自分が目撃したことをロザーリアに話します。
ロザーリアの夫もまた、殺害されてしまいます。
バルレーゼの弁護士は、ロザーリア・リカータの夫が殺されたのは
男女関係のもつれが原因だと決めつけ反論します。
怒り狂ったロザーリアは弁護士に猛反発し、バルレーゼをにらんで人殺しと言い放ちます。
拘置所の独房にいるジャカローネのもとに、差し入れが届きます。
お菓子に紛らわせて入っていたのは、折りたたみナイフでした。
ローソファー ヴィンテージ デザイン ハイバック ファブリック フロアソファー 二人掛 ローソファ 2人掛け 脚 ハイバックローソファ 〔ウィル〕 2人掛け ヴィンテージ デザイン ファブリック コーナー フロアソファー 二人掛
再びヴァチルカが被告席に着きます。
ヴァチルカは隠し立てせず、知っている限りの事実を陳述する覚悟でした。
ところが、バルレーゼの弁護士の執拗で挑発的な質問の連続にあって頭が混乱し、
ついにヴァチルカはてんかんを発症してしまいます。
証拠調べがすべて終了した時、裁判長のもとに、
ジャカローネが独房内でナイフで喉を搔き切って自殺した、
という知らせが届けられます。
検察官の論告。
「暴力、国家の第五の権力。他のすべての人々を一つにまとめ動かし、
他のすべての人々を服従させ腐敗させる。
この裁判で私たちはセンセーショナルな一例を目の当たりにしました。
おどおどした証人、語りたがらない犠牲者の親族、自殺するほど恐れおののいた被告、
不可解にも消えた証拠品。
これがマフィアです。」
判決が言い渡されます。
バルレーゼを筆頭に告訴されたメンバーは無罪釈放。
ヴァチルカだけを殺人罪の犯人と認定し、懲役30年が言い渡されます。
無罪を勝ち取ったバルレーゼは、新聞記者たちを前に笑いが止まりません。
その後、バルレーゼ派は白昼堂々とクルーピ派つぶしを再開するのでした。
★ ☆ ★ ★ ☆ ★
主舞台は法廷。
被告人や証人の陳述が回想として挟み込まれる形で展開していきます。
観ていて、すごく疲れます。
登場人物の激しい口調の陳述や弁護が、私たちに与えるストレスは相当なものです。
冷静に証言を引き出して元凶(マフィア)の罪を問おうとする検察官。
憎たらしいほどに執拗に質問を証人に浴びせかけるバルレーゼの弁護士、コロンネージ。
恐怖で躊躇しながら証言する実弟を殺害されたサレーミ教授。
貧しさから依頼を引き受け、一連の殺人事件で有罪判決を受けたヴァチルカ。
大家族を養うために犯罪に手を貸し、拘留中の独房に送り込まれたナイフで自殺を強いられたジャカローネ。
ダム建設プロジェクト大賛成の建設業者バルレーゼ。
殺害を目撃した夫を殺されたロザーリア・リカータだけが、真犯人に立ち向かいます。
当時大量に撮られた娯楽系のマフィア作品とは全く違う社会派作品なのですが、
ヴァンチーニ監督の作品としては高く評価されていません。
ただし出演者たちがアップで語るシーンはいずれも熱演で、一見の価値ありです。
★ ☆ ★ ★ ☆ ★
イタリア語原題にあるように、原作者ジュゼッペ・ファーヴァ Giuseppe Favaは、第五の権力を「暴力」としています。
では、第一から第四は何?
国家権力とは、立法権、行政権、司法権の三権。中学公民で習った通りです。
第四の権力とは… マスメディア。
そして、第五が「暴力」というわけです。
現在、第五の権力は「SNS」といわれています。
考えてみれば、確かにそうでしょう。相手の顔が見えない暴力ですから。
★ ☆ ★ ★ ☆ ★